平成10年度は虚血再灌流モデルでの細胞膜Na+/H+交換系機能を細胞内pHと細胞内ナトリウム濃度の変化から検討した。ウサギ単離心筋細胞を用い、sodium cyanide(NaCN)を含むglucose無添加の灌流液で虚血状態を作成した。再酸素化は通常の灌流液に戻して行った。細胞内pHとナトリウム濃度の変化は、それぞれpH感受性蛍光色素(BCECF)とナトリウム感受性蛍光色素(SBFI)を使用し、細胞内イオン測定装置で測定した。まずNa+/H+交換系抑制薬であるEIPAを投与して虚血再灌流前後での細胞内pHとナトリウム濃度の変化を記録した。 虚血中、細胞内pHは低下し、細胞内ナトリウム濃度は増加した。再灌流後は細胞内pH・細胞内ナトリウム濃度ともに虚血前値に復した。EIPA投与群では、虚血中の細胞内pHは低下したものの、細胞内ナトリウム濃度は変化しなかった。 再灌流後は細胞内pHは虚血前値に復し、細胞内ナトリウム濃度は虚血中と同様に変化しなかった。以上から細胞膜Na+/H+交換系の抑制は虚血再灌流障害を軽減する可能性が示唆された。
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