研究概要 |
雄性SDラットの坐骨神経をG.Benettらの方法に準じてクロミックガットにて4回ゆるく結紮することにより神経因性疼痛モデルを作成した。手術3日後より,熱刺激(thermal-hyperalgesia),機械刺激(mechano-allodynia,mechano-hyperalgesia)に対する疼痛過敏行動が出現し,それは,イノシトール三燐酸などの細胞内伝達機構を抑制するリチウムを髄腔内投与することにより,容量依存性に抑制された。この抑制効果はイノシトールの同時投与により消失することにより,リチウムの効果は細胞内セカンドメッセンジャー系を介していることが明らかとなった。この研究成果は,雑誌Painに掲載された。 臨床では神経損傷後の疼痛はオピオイド抵抗性であることが知られているが,その機序として内因性オピオイドの調節機構に変化が起きているためではないかと考えられる。そこで,ラットの坐骨神経損傷後の脊髄後角に内因性オピオイド受容体のリガンドであるエンドモルフィン,ノチセプチンの発現分布を調べる目的で,蛍光抗体法による免疫組織科学的手法を試みた。研究計画では神経損傷後に内因性オピオイド受容体のアゴニストであるエンドモルフィンやノチセピチンのアップレギュレーションを予想したが,抗体の特異性が低いためか脊髄後角においてこれらの物質の発現は認められなかった。今後,目的とする物質を変更し,さらに検討を加える予定である。
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