研究課題/領域番号 |
10671413
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 一般 |
研究分野 |
麻酔・蘇生学
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
西村 匡司 大阪大学, 医学部・附属病院, 講師 (10172701)
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研究分担者 |
妙中 信之 大阪大学, 医学系研究科, 助教授 (10127243)
上甲 剛 大阪大学, 医学系研究科, 助手 (20263270)
松浦 成明 大阪大学, 医学系研究科, 教授 (70190402)
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研究期間 (年度) |
1998 – 1999
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キーワード | 陽圧換気 / 医原性肺損傷 / 胸部CT像 / 仰臥位 / 腹臥位 / diffuse alveolar damage / Acute respiratory failure / Inflammatory mediators |
研究概要 |
現在、人工呼吸管理において最も重要なことは、医原性の肺損傷を防ぐことと考えられている。6mL/kgと12mL/kgの一回換気量を比較するNIHのトライアルが1994年から始まり、その結果がまとめられた。低一回換気量群で有意に予後を改善した。これは過膨張による医原性の肺損傷を防ぐことが呼吸不全患者の予後をも改善することを示したものである。約30年間、効果的な治療方法が見つからなかった急性呼吸不全患者の予後を改善した点で、歴史的な出来事と言っても過言ではない。この報告では他の要因の影響は不明である。体位が医原性の肺損傷発生に対して、予防的な効果があるとする考えがあるが、その効果はあきらかではない。本研究では、体位により医原性の肺損傷発生頻度、発生部位が影響されるかを検討した。 家兎をペントバルビタール麻酔下に気管切開し、筋弛緩薬使用下に小児用人工呼吸器を用いて陽圧換気を行った。体位は仰臥位の2群(各群6羽)で行った。換気条件は酸素濃度21%、換気回数30回/分、吸気時間0.6秒、最大気道内圧30cmH_2O、呼気流量10L/分とした。人工呼吸開始から30分毎に胸部CTを撮影するとともに、血液ガスを測定した。CTで陽圧換気が原因と考えられる陰影が発生するまで人工呼吸を続けた。医原性肺傷害の出現部位の差についても検討した。 陰影が出現するまでの時間は腹臥位群の方が長かった。CT像ではいずれの群でも、肺底部で背側からconsolidationが出現し始めた。両群で1羽だけ他の部位に陰影が出現した。両群間で出現部位に有意差はなかった。取り出した肺は、CTで陰影を認めた部位が肉眼的に赤色を呈していた。組織学的には炎症細胞の浸潤、肺硝子膜の形成、弾性組織の断裂を認め、diffuse alveolar damageの所見と酷似していた。仰臥位では背側に医原性の肺損傷が発症しやすいと言われている。これは過膨張による医原性肺損傷ではなく、虚脱・再拡張の繰り返しによるずれ応力が原因であると考えられている。しかし、その発生経過を検討した報告はなく、実際に体位により発症が異なるかは不明である。本研究の結果は、体位に関わりなく医原性肺損傷は発症することを示している。さらに、発症部位が体位により変化しなかったことから、体位による血流や換気の変化よりも解剖学的な因子の影響の方が強いことが示唆された。
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