研究概要 |
本年度は、halothaneとsevofluraneの肝への影響について検討した。検討項目は、組織化学的に(1)一般的な構造変化(apoptosisの動態を含む)の観察としてHE染色、(2)多糖類の変化の観察としてPAS染色、(3)細網線維の変化の観察として鍍銀染色、(4)actin線維の観察としてSiguma社のactin抗体(F5262、F5897)による免疫組織化学染色と電子顕微鏡法、(5)rRNAの変化の観察として、rRNAの18Sと28SmRNAをdigoxigenin labelledoligonucleotideの作成によりin situ hybridization法、(6)さらに、電子顕微鏡により細胞内構造の変化を観察した。 実験は、ラット(SD雄、γW)をI群とII群に分け、さらにそれぞれをA,B,Cの3コースに分けて行った。I群は、無処置健常ラット群、II群は、0.l% phenobarbital水を5日間投与したラット群である。さらにAコースは10%酸素下に、Bコースは10%酸素下にそれぞれ1 MAC量の0.7%halothaneまたは2%sevofuraneに、Cコースは21%酸素下に0,7%halothaneまたは2%sevofluraneに、それぞれ2時間被曝させた。肝の摘出は、それぞれ被曝直後、被曝後3時間目から7日目まで4%paraformaldehyde灌流後行った。摘出した肝は、常法に従ってパラフィンおよびエポン樹脂包埋した。 結果は、両吸入麻酔薬ともにII群のBコースにのみ変化が認められた。その変化は、(1)被曝直後は変化を認めなかったが、被曝3時間目には門脈と中心静脈の中間の細胞に空胞が認められ始めた。この空胞化した細胞は、時間とともに中心静脈側に移動し、核は萎縮し12時間から3日後には消失した。この壊死性変化は、被曝1日後をピークに7日後には健常像に回復した。(2)空胞化した細胞から中心静脈までは、PAS染色、rRNAのin situhybridizationは、陰性であったが、被曝5-7日後には健常像に回復した。(3)Apoptosis像は、健常時中心静脈周辺に散見されたが、被曝後12-24時間後には中心静脈周辺に増加していることが認められた。(4)細網線維は、被曝6時間後から細胞の空胞化が認められた部位の類洞では健常像とはかなり異なり、集合したように観察された。 今回の結果で同じ1 MAC濃度の麻酔薬でもhalothaneにくらべsevofluraneのほうが、変性の程度は軽度であった。細網線維の動態と細胞内actinの動態については、今後さらい観察検討する必要がある。 平成11年度には、isofluraneについて同様の実験を行い4つの麻酔薬について肝に及ぼす影響について詳細に検討する予定である。
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