平成10年度、11年度の2年間にわたる研究の最終年度として、平成10年度に引き続き、マウスによる動物実験系での研究を行った。一酸化窒素(NO)の濃度調整に800ppmNOガスボンベから窒素流量計で調節した800ppmNOガスフローと一定の新鮮ガスフロー(酸素空気混合)との混合法を用いる系を作成し、一定の酸素濃度及びNO濃度の吸入を可能にした。NO濃度はケミルミネッセンスNO-NO2-NOxアナライザーで確認した。プロスタグランジンI_2(PG-I_2)の吸入法は、一定濃度のPG-I_2希釈液を超音波ネブライザーに入れ、エアゾールとして吸入暴露装置に投与する系を作成した。吸入暴露は、小動物用吸入暴露装置を用い、同時に8匹に同一条件(同一NO濃度、同一時間)でのNO及びPG-I_2の吸入実験系を確立した。 マウスを用いて、エンドトキシンによる実験的呼吸窮迫症候群(ARDS)モデルで、NOとPG-I_2の生存及び肺に及ぼす効果を検討した。検討項目の第1は、肺傷害を起こす前から、NOやPG-I_2を投与する系、すなわちNOやPG-I_2の肺傷害予防効果をみるものである。検討項目の第2は、肺傷害を起こしてからNOやPG-I_2に治療効果があるかをみるものである。現在、その結果を解析中である。以上の動物実験系の確立により今後肺傷害の各段階でNO、PG-I_2吸入療法の有効性と、作用機序の研究が可能となった。今後さらに成人呼吸窮迫症候群などの臨床への応用が期待される。
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