研究概要 |
平成11年度には、平成10年に完成させたNMDA持続くも膜下投与によるラットの痛覚過敏モデルの特性評価として,NMDAくも膜下持続注入中の脳脊髄液中のグルタミン酸濃度を測定した.【方法】ハロセン麻酔下にラットの大槽を切開し、くも膜下腔内に薬物投与用のカテーテル(PE10)と自作のマイクロダイアリーシス用のループカテーテルを挿入する。術後5日目に以下の実験を行った.くも膜下カテーテルより生理食塩水で溶かしたNMDAを10μl/minの一定の速度で注入した.NMDA濃度は180pmol/minの量となるよう設定した.UCSD式のラット足底熱刺激装置を用いて,足底部に熱刺激を加えてからラットが足を上げて逃避するまでの時間を測定し,これを痛覚閾値とした.測定はNMDA注入開始前と開始後5分毎に測定した.マイクロダイアリーシス用カテーテルから人工髄液を潅流し(10μl/min),NMDAのくも膜下持続注入開始前と開始後10分間毎に採取した回収液中に含まれるグルタミン酸を高速液体クロマトグラフィーで測定した.【結果】1)NMDA注入開始後10分後には注入量が180pmol/min群で逃避時間が約35%低下した.この閾値低下はNMDA注入の間一定に持続しNMDA注入中止後10分でコントロール値に戻った.2)脊髄CSF中グルタミン酸濃度はNMDA注入により約10分後から上昇し30分後にはピークに達し,生理食塩水注入のコントロール群と比較して30%増加した.グルタミン酸はNMDA持続注入の中止により30分でコントロール群と同程度まで低下した.【結論】この実験結果から,グルタミン酸受容体の一つであるNMDA受容体活性化は脊髄内グルタミン酸濃度を上昇させることが明らかになり,グルタミン酸はその受容体を介して自らの細胞外濃度を上昇させる悪循環を作ことが判明した.しかしながら我々の実験系ではこのグルタミン酸濃度上昇がグルタミン酸放出の促進によるものか,あるいは再取り込みの抑制によるものかは明らかにできない.
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