研究概要 |
本研究は敗血症性臓器障害に対するテブレノン投与により熱ショックタンパク質誘導を行い、その臓器保護作用を検討することを目的として計画されたものである。 1.敗血症性臓器障害・chemical mediator・HSP-70の検討結果 (1) 臓器障害:腹膜炎敗血症により組織学的に明らかな肺障害、肝障害、小腸では粘膜障害が顕著に認められ、横隔膜収縮力の低下が認められた。 (2) chemical mediator:腹膜炎敗血症により炎症性サイトカイン(tumor necrosis factor-alpha,interleukin-lbeta)、NO_Xの異常上昇が認められた。また、敗血症により門脈内のエンドトキシン濃度が検出された。 (3) HSP-70:腹膜炎敗血症により肝臓では中心静脈を中心とした肝細胞・類洞細胞に弱くHSP-70の誘導が認められた。肺では気管・気管支粘膜上皮を中心にHSP-70の誘導が認められた。横隔膜にもHSP-70の誘導が弱く認められた。 2. テフレノン投与による臓器HSP-70誘導性についての検討結果 (1) テフレノン50mg/kgより肝臓以外の臓器(肺、腎、消化管粘膜,心、横隔膜等)に免疫組織科学的にHSP-70の発現を認めた。Western blottingはテフレノン100mg/kgラットの消化管粘膜、横隔膜で検出された。 3. テフレノン投与による臓器保護作用の検討 (1) 実験的多発性壊死性腸炎(MNE)の作成:ラット小腸の虚血再環流障害後にtumor necrosis factor投与(Two hit model)により典型的なMNEが発症した。これによりbacterial translocationの指標となる門脈血エンドトキシンの以上上昇を認めた。テフレノン200mg/kg投与によりHSP-70が小腸粘膜に誘導され粘膜障害が軽減された。 (2) 敗血症性横隔膜収縮障害への検討:テフレノン50mg/kg以上の投与で敗血症性横隔膜収縮傷害が有意に減少した。テフレノン100mg/kgと200mg/kgでは収縮力改善効果に差は認められなかった。
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