本研究の目的は二酸化炭素(CO2)中毒とそのメカニズムを明らかにすることにある。今年度はCO2の毒性を検討した。(1)毒性試験:マウスの半数致死濃度(LD50)を決定した。[方法]容積100Lのガラス容器内を各濃度に一定とし、マウスを10分間暴露させ、半数の死亡(呼吸停止)によりLD50を求めた。[結果]酸素濃度21%では、CO2のLD50は35-40%、以下酸素15%では25%、酸素10%では20-25%、酸素8%では5-10%であった。低酸素状態になると二酸化炭素のLD50は低下した。(2)中毒のメカニズムの解明として今年度はマウスの行動・運動量を測定した。[方法]行動は、各濃度でのマウスの動かなくなった時間(行動停止時間)、痙攣の有無、死亡時間を測定した。運動量は、運動量モニター″AUTOMEXII″(コロンバス社、設備備品として購入)を用い、マウスの自発運動を10分間を1分毎に各濃度下で測定した。対照はCO2暴露前の空気中での10分間の運動量とし、各濃度での運動量を対照値と比較した。[結果](1)運動量は酸素21%ではCO2が5%で、空気中の45±11%(平均値±標準偏差)に減少した。CO2が10%では25±11%、CO2が15%で23±11%、CO2が20%で7±6%に減少した。酸素が15%の環境下では、CO2が5%で62±16%、CO2が10%で32±14%、CO2が15%で15±7%、CO2が20%で6±5%に減少した。CO2の濃度が上昇すると、行動量は明らかに減少し、特にCO2が20%では著明な減少が認められた。(2)痙攣は酸素21%ではCO2が35%以上になると出現した。酸素10-15%ではCO2が20%以上、酸素8%ではC02が5%以上で出現した。(3)行動停止時間は酸素21%ではCO2が20%以上になると認められ約1分であった。(4)死亡時間に関しては数が少ないので、今後検討する。以上、本年度はマウスのCO2中毒の半数致死濃度を各酸素濃度下で決定した。CO2中毒では、濃度の上昇とともに行動量は減少し、特にCO2濃度20%では、暴露直後からほとんど動かなくなったという知見を得た。
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