研究概要 |
本研究の目的は二酸化炭素(CO_2)中毒の毒性とそのメカニズムを明らかにすることにある。平成10年度はCO_2の毒性をマウスで検討し、CO_2には毒性があり、濃度の上昇とともに行動量は減少するという結果を得た。今年度は、中毒のメカニズムとして呼吸と循環に及ぼす影響を観察する予定であったが、ラットで循環系を観察するのは困難のため、呼吸系のみとした。また、麻酔薬による影響を除くため、覚醒下のラットを無拘束状態で行った。[方法]1.ラットをプラスチックのチヤンバー内に入れ、空気呼吸下で呼吸数を測定(Mac Labスパイロメータ、コロンバス社、設備備品として購入)した(対照値)。2.酸素濃度は常に21%とし、CO_2濃度は5%,10%,20%,30%,40%(各群5匹)で10分間曝露し、呼吸数を測定した。各濃度での呼吸数の変化を対照値と比較した。[結果]CO_25%では、4分後98±26%、7分後114±37%、10分後85±21%に変化した。CO_210%では、4分後74±26%、7分後56±17%、10分後52±26%に変化した。CO_220%では、4分後96±17%、7分後101±30%、10分後112±39%に変化した。CO_230%では、4分後90±16%、7分後105±39%、10分後99±34%に変化した。CO_240%では、4分後63±6%、7分後62±32%、10分後52±35%に変化した。CO_240%までの実験中に死亡したラットはなかったが、CO_240%の終了後に2匹は数分間以内に死亡した。以上から、CO_230%までは呼吸数は有意な変化は示さなかったが、CO_240%では有意に減少した。今後の研究として、呼吸中枢神経の活動電位を測定しCO_2中毒の呼吸におけるメカニズムを解明していく予定である。また、今回測定できなかった循環系に対する作用も研究する。
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