研究概要 |
1.研究目的:吸入麻酔薬ハロタンによる全身麻酔下でのエピネフリン投与は、重篤な不整脈の原因となる。K_<ATP>チャネル開口薬のニコランジルおよびマグネシウムは、いずれも抗虚血作用を介して心節保護的に作用するが、これらの抗不整脈作用に関する比較研究はない。本研究では、ニコランジルおよび硫酸マグネシウムの抗不整脈作用をハロタン-エピネフリン誘発性不整脈の発生閾値におよぼす効果から比較検討した。2.研究方法:ラットを用い、無作為にニコランジル(N)群(n=7)、硫酸マグネシウム(Mg)群(n=7)および対照(C)群(n=7)の3群に分けた。麻酔は1.5MACハロタン吸入により導入して気管切開し、1.5MACハロタンおよび純酸素にて維持した。心拍数、動脈圧を測定して心電図変化を記録した。ハロタン-エピネフリン誘発性不整脈の発生閾値(エピネフリンの投与速度)はMaycr^<1)>およびLaster^<2)>らの方法を用いて1.5MACハロタン吸入下で測定した。測定はN群ではニコランジル10μg・kg^<-1>・min^<-1>、Mg群では硫酸マグネシウム8mg・kg^<-1>・min^<-1>、C群では生理食塩水1.0ml・kg^<-1>・min^<-1>をそれぞれ静脈内投与して20分経過した時点で行い、発生閾値、発生閾値での血中エピネフリン、ニコランジルおよびマグネシウムイオン濃度を3群間で比較した。3.研究結果:ニコランジルは他の2群よりもハロタン-エピネフリン誘発性不整脈の発生閾値を有意に上昇させた。硫酸マグネシウム投与は血中マグネシウムイオン濃度を投与前の約2倍まで上昇させた。 4.結論:本研究により、ニコランジルはマグネシウムよりも優れた抗不整脈作用を有していることが判明した。1)Anesthesiology71:923-928,1989.2)Anesth Analg 70:654-657,1990.
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