【研究の背景】揮発性吸入麻酔薬は、心筋の虚血・再灌流傷害に対して保護的に作用するが、その機序は未解明である.本研究は、セボフルラン誘発性の虚血心筋保護効果にK_<ATP>チャネルの活性化が関与しているかどうかを明らかにすることを目的として行われた. 【方法】フェンタニル麻酔下のイヌ(n=21)を無作為にコントロール(C)群(n=7)、セボフルラン(S)群(n=7)およびセボフルラン+グリブライドglyburide[K_<ATP>チャネルアンタゴニスト](SG)群(n=7)の3群とした.C群ではvehicleのみを投与した.S群およびSG群では虚血開始30分前にそれぞれvehicleおよびグリブライド1.0mg/kgを静注した後に、セボフルラン(1.0MAC)を最終再灌流直前まで吸入させた.気絶心筋は、左冠動脈前下行枝の第1対角枝分岐部よりも遠位側で、閉塞と再灌流とをそれぞれ5分間ずつ5回反復することによって作成した.左室虚血領域の心筋収縮機能は、1対の超音波振動子によって測定される心筋短縮率percent segment shortening(%SS)を用いて評価した.心血行動態および%SSの測定は、baseline、1回目の閉塞直前、5回目の再灌流直前、最終再灌流後15、30、60、120および180分の各時点で行い、3群での変動を比較検討した. 【結果】再灌流後180分での%SSは、SG群ではbaselineのほぼ50%レベルにとどまったのに対し、S群ではbaselineのほぼ90%レベルまで回復した.C群での%SSは、S群およびSG群の中間の回復パターンを示した.S群では、動脈血圧および心拍数が他の2群よりも有意に低下した。 【結論】本研究結果から、セボフルランは主にK_<ATP>チャネルの活性化を介して、虚血心筋局所の収縮機能の回復を促進させることが明らかにされた.
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