研究概要 |
1) 中心的手法として採用した脈波伝播速度の測定によって,大動脈の人工血管置換が脈波伝播速度を大幅に加速することを見いだし,論文として完成して出版した(文献1). 2) 脈波伝播速度の解析に従来使用されてきたMoens-Kortewegの式は,「弾性を有するが質量を有しない」状態を仮定しており,ごく薄くてしかも健康な血管壁にのみ成立するもので,動脈硬化などで血管が「肥厚」して厚みを増して質量の大きい場合には成立しない点を明らかにした(文献2,3). 3) 脈波が末梢で拡大する現象に関しては従来満足できる説明がなかったが,末梢血管壁の弾性以外に質量も考慮することにより,振動系の特性に基づくものとの理論を固め,仮説として発表した(文献2,3,4). 4) この理論を検証するために,コンピュータプログラムによって電気回路シミュレーションを行い,定性的に理論通りになることを確認した(文献5). 5) 血管壁質量を考慮してMoens-Korteweg式を改変する理論を検討中である. 6) 回路シミュレーションの精緻化を実施中である. 7) 以上の結果は、上に述べた学会と論文の究表の他に,下の二つの特別講演でも報告した. ・ 諏訪邦夫:特別講演:脈波はなぜ末梢で広くなるか--物理学・化学・数学でみる麻酔学 日本麻酔学会東海北陸地方会,第88回東海地方会総会 岐阜市1998.2.14 ・ Suwa K.:Special lecture.Why the pulse pressure widens as it travels down along the tree--Anesthesia viewed in physics,chemistry and mathematics. ・ 10th Asia-Australasia Congress of Anesthesiology.Taipei,Taiwan.May,1998.
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