研究分担者 |
石黒 芳紀 帝京大学, 医学部, 講師 (40232285)
後藤 隆久 帝京大学, 医学部, 助教授 (00256075)
新見 能成 帝京大学, 医学部, 助教授 (90198416)
森田 茂穂 帝京大学, 医学部, 教授 (60143476)
市瀬 史 帝京大学, 医学部, 講師 (40276712)
|
研究概要 |
本研究が解析し,判明したことは以下の通りである. 1)人工血管の脈波伝播速度が,通常人体の血管と比較して極端に高速であることを見出した.健常人の大動脈の脈波伝播速度は5m/秒程度,動脈硬化症患者のそれが10m/秒程度であるのに対して,通常の材質(テトロン系合成線維)で作られている人工血管の脈波伝播速度は,その数倍であることを実際の患者で発見した. 2)脈波伝播速度を測定する方法として,心電図のQRS波から指プレティスモグラフ(パルスオキシメーターを使用)の立ち上がりまでの時間を用いる法を開発した.この方法は,心臓の電気的収縮から機械的収縮までの時間を無視する欠点を有する.しかし,脈波伝播速度を簡便に,しかも心拍毎に測定できる大きな利点を有する.この手法をもちいて,種々の状況で脈波伝播速度を計測し,手法の有用性を確認した. 3)脈波伝播速度が同一個体の同一部位でも状況によって変動しうる可能性を証明した. 3-1)脈波伝播の途中で動脈を外側から圧迫して動脈壁の内外圧差をバランスさせて血管壁の伸展性を上昇させることにより,脈波伝播速度は著しく低下した. 3-2)上肢を挙上して動脈内圧を低下させ,血管壁の伸展性を上昇させることにより,脈波伝播速度は著しく低下した. 4)脈波伝播速度の解析において,従来は血管壁の厚みを無視してきたが,病態においては血管壁の厚みが無視できないことを仮説として提案し,理論的に解析して数値解を提案した. 5)脈波伝播の状況を種々のモデルで確認した.それによって,上記の壁の厚みと質量を無視すべきではないことを確認した. 6)従来,種々の予測にもかかわらず脈波伝播速度が動脈硬化の診断に必ずしも役立っていない場合もある.その場合,血管壁が「硬くなる」だけでなくて,「重くなる」要因が加わることが原因であると結論した.
|