研究概要 |
オピオイドの呼吸中枢抑制は未だ解明されていない。呼吸性ニューロンはInspiratory(Insp),Pre-Inspiratory(Pre-I),Expiratory(Exp)neuronの3種類からなり、ネットワークを形成している。我々は"blind"patch clamp tecniqueを用いたwhole-cell recordingにより延髄呼吸性ニューロンに対するオピオイドの影響を検討した。【方法】0-4日齢Sprague-Dawleyラット(n=59)脳幹脊髄標本の延髄呼吸性ニューロンからwhole-cell recordingを行いμ-opioid receptor agonist DAGO(Try-D-Ala-Gly-N-Methyl-Phe-Gly-ol)1μMを投与し膜電位解析を行った。呼吸性ニューロンの運動性出力(respiratory frequency以下fR)はC4-5から記録した。【結果】fRは有意に低下。Insp neuronでは静止膜電位(Em)、膜抵抗(Rm)は有意に変化。Emは23例中11例は過分極、11例は変化なし、2例は脱分極。Rmは過分極したものは減少し、脱分極したものは増加。テトロドトキシン還流後もEm,Rmは有意に変化。Emは18例中7例は過分極し、Rmが減少。Insp neuronではリズムジェネレーターであるPre-I neuronからの興奮性シナプス後電位(EPSP)、抑制性シナプス後電位は消失しなかった。Pre-I,Exp neuronは影響を受けなかった。Insp neuron(whole-cell recording)とその反対側延髄のPre-I neuron(extracellular recording)の同時記録によりfR,Insp neuronの抑制とPre-I neuronが抑制されないことを確認。反対側延髄電気刺激によりInsp neuronのEPSPは有意に延長。【総括】DAGOはInsp neuronを直接抑制した。DAGOは延髄呼吸性neuronに対し、前シナプス及び後シナプス性に作用した。今後はその他のオピオイドレセプター刺激剤(カッパ、デルタ)についても、同様に研究を進めるつもりである。
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