研究概要 |
好中球内に、存在するペプチドである分子量18Kdのcationic antimicrobial protein(CAP18)の生理活性ペプチドCAP18は、殺菌作用とLPS中和作用の両作用を有する。このCAP18免疫グロブリンGとヒト免疫グロブリンGを結合させた、新しい合成CAP18免疫グロブリンGを用いて,ヒト全血中での殺菌作用やサイトカイン産生に及ぼす効果を研究した。ペプチドは血液中でその作用を減ずる事が知られ、これらの半減期はいずれも非常に短い。合成ペプチド免疫グロブリン化合物にすると、ペプチド単独よりも、血中半減期は長くなり、しかも免疫グロブリンGのFc部位を利用して食細胞によるFcレセプターを介した,LPS及び細菌のクリアランスが増大することが期待できる。現在までの研究により、CAP18免疫グロブリンGもCAP18ペプチドと同様にヒト全血で、グラム陰性菌に対して、殺菌作用があること、並びに、グラム陰性菌によるサイトカイン(TNF,IL-8)の産生を抑制する結果が得られた。更に、CAP18ペプチドと同様、抗凝固剤により、殺菌作用やサイトカイン産生抑制作用が影響される結果が得られた。現在、CAP18免疫グロブリンGとCAP18ペプチドのペプチドのモル数を同じにして、CAP18免疫グロブリンGの細菌のクリアランスが増大するかどうか調べている。また、合成CAP18免疫グロブリンの食細胞機能に及ぼす影響をヒト全血で、FITCでラベルした大腸菌を用いて、フローサイトメトリーにて測定している。今後、動物実験モデルを用いて、CAP18免疫グロブリンGが生体内で、殺菌作用、並びにLPSと結合中和作用を有するかどうか、検討する研究し、この新しい合成生理活性物質のエンドトキシンショック及び臓器障害に対する有効性を明らかにしたい。
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