研究概要 |
<研究の目的> 敗血症性ショック時における肺障害の機序に関して,白血球とくにマクロファージ(MF)から放出される組織障害性のメディエー夕やサイトカインの関与が示唆されている.しかし,敗血症時の肺障害に肺胞MFが関与しているのか,または血中に存在し敗血症時に肺毛細血管内に接着するマクロファージが関与しているのか明らかにされていない.chlodronate(以下Cl2MDP)はVon Rooijenらにより最初に用いられた物質で,その投与経路により肺胞MFや腹腔MF,血管内MF等をそれぞれ選択的に死滅させることができる.またリポソーム化して用いるためMFに特異的に取り込まれ,他の細胞や臓器に対する作用は認められない.今回,我々はC12MDPをラットの気管内に投与し肺胞MFを,また血管内に投与して血管内MFを選択的に枯渇させ,敗血症によって惹起される肺障害について肺胞MFが関与しているのか,または肺血管に接着した血管内MFが関与しているのかを明らかにすることを目的としている,本研究はエンドトキシン肺障害にかかわるMFの影響を詳細に解明するだけでなく,本研究で用いるリポソーム技術は,今後様々な炎症性疾患の病態生理を解明する上で多くの情報を提供できると考えられる.<本年度の研究実績の概要> ・Cl2MDP liposomeの作製:フォスファチジルコリンとコレステロールとを用い,Von Roojienらの方法によりロータリーエバポレータにてCl2MDPリポソームを作製した.エンドトキシン肺障害へ及ぼすCl2MDPの気管内投与の影響を調べるため、Cl2MDPはエンドトキシンショック作製の3日前に気管内に投与し、またコントロール群(n=7)として生理食塩水をCl2MDPと同様な方法でリポソーム化したものを気管内投与して用いた. ・エンドトキシンショックモデルの作製:エンドトキシンショックモデルはWister系ラットを用い、LPSの静脈内投与(20mg/kg)により作製した。 ・Cl2MDP投与後の肺胞マクロファージ数と肺の形態学的検査:Cl2MDP投与後1,2,3,5,7日目に気管支肺胞洗浄(BAL)により肺胞マクロファージを回収し,細胞総数,マクロファージ数を測定した.肺胞マクロファージは3日目にコントロール値の70%にまで低下し7日目には復帰傾向が見られた。 エンドトキシンショックによる肺障害の評価:LPS投与後24時間目に^<125>Iと^<51>Crを用いたdouble isotope methodで肺血管外水分量を測定し評価した.肺血管外水分量はコントロール群(n=7)と比較してCl2MDP投与群(n=7)では有意に低値を示し、Cl2MDF投与による肺胞マクロファージ枯渇がエンドトキシン肺障害を抑制することが示唆された。現在、肺組織、血中サイトカイン産生の違いについて検討中であり、またCl2MDPの血管内投与がエンドトキシン肺障害や致死率に及ぼすの影響についても検討している。
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