研究概要 |
Wistar系ラットの骨盤神経節あるいは外尿道括約筋(各々n=4)に、蛍光性逆行性神経標識物質であるFastBlueを注入し上記細胞を標識後、L6からS1の脊髄を摘出し、20μm厚の薄切切片を作製し、各々の受容体サブユニットのmRNAに相補的な35S標識オリゴヌクレオチドプローブにてin situハイブリダイゼーション法を施行し、AMPA型受容体サブユニット(GluRA-D)およびNMDA型受容体サブユニット(NR1,NR2A-2D)の各mRNAを各標識神経細胞上に検出した。 脊髄排尿中枢においてvisceromotor neuronであるPGNとsomatomotor neuronであるOnufでは、AMPA,NMDA受容体ともにサブユニット構成に大きな違いが認められた。すなわちAMPA受容体サブユニットについては、PGNにおいて、GluRAおよびGluRBサブユニットが強く発現しており、GluRCおよびGluRDサブユニットの発現レベルは低かった。一方、OnufではGluRAおよびGluRBサブユニットの他に、GluRCおよびGluRDサブユニットの発現がより強く認められた。NMDA型受容体については、PGNにおいてNR1サブユニットが強く発現していたが他のNR2サブユニットは極めて発現が弱かった。Onufにおいては、NR1サブユニットの他にNR2AおよびNR2Bサブユニットの発現が認められた。 以上より脊髄排尿中枢における膀胱、尿道を支配するPGNとOnufでは、そのグルタミン酸受容体のサブユニット構成に大きな違いがあることが明らかになった。特にNMDA型受容体においては、NR1サブユニットは、いずれかのNR2サブユニットとヘテロメリックチャネルを作って活性型のNMDA型受容体になる事実が判明しているが、Onufに比較するとPGN自体のNMDA受容体チャネル活性は極めて低いものと考えられた。これはグルタミン酸受容体拮抗薬に対して薬理学的に膀胱と尿道の反応が異なるというこれまでの報告の重要な裏付けのひとつであると考えられた。
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