研究概要 |
前立腺癌は診断時にすでに60%に転移が認められる。米国では毎年27,000人が前立腺癌により死亡しており、男性の癌死の第2位を占めている。一般に前立腺癌の臨床診断が病理組織学診断をunderstageする確率は40%以上である。血中のPSA messenger RNA(mRNA)の陽性が癌浸潤と相関するとの仮定のもとに、より正確な臨床stage診断法の開発を試みた。 Reverse transcriptase-polymerase chain reaction(RT-PCR)は、mRNAからreverse transcriptaseによりcDNAを合成し、さらにcDNAよりDNA polymeraseによりDNAを増輻する方法で微量のmRNAの検出に応用されている。一方前立腺特異抗原(prostatic specific antigen:PSA)は正常前立腺細胞に発現し前立腺癌でも高率に発現し転移性腫瘍組織ではPSA,PAPの発現が前立腺原発であることの証明に利用され、また、血清PSA、PAPの測定が、前立線癌のマーカーとして利用されている。PSA、PAPのcDNAはすでに決定されており、今回PSAを産生するヒト前立腺癌細胞であるLNCaPよりISOGEN-LSを用いてtotal RNAを抽出し逆転写酵素によりcDNAを合成し、PSAの遺伝子配列の一部に相補的なoligonucleotideをPCRの伸長用primerとしRT-PCRを行い、アガロースゲル電気泳動によりPSAのcDNAの塩基配列より予測される増幅されたDNA断片を観察した。さらに、internal probeを用いてSouthern blot hybridizationにより目的とするDNA断片の増幅であることを確認した。mRNAによるPSA陽性細胞の検出は非常に鋭敏で、末梢血単核球106個に混入された場合、LNCaP細胞1個まで検出可能であった。ELISAによる血中PSA mRNAを検出する系を確立した。今後は大量の検体を短時間に測定できりELISA法を用いての検討を行う。大量の検体を検査Centerに運びmRNAを検出、定量するために安価に各病院から検体を検査Centerに運ぶ必要がある。mRNAは-70℃で保管しなければ壊れてしまうが、細胞は常温でもこわれない。そこで、全血のままで検体を運んでもmRNAが検出可能である事を確認した。
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