研究概要 |
間質増殖の主因はコラーゲン繊維の増生と平滑筋細胞の増殖とにあり、これら間質増殖は上皮-間質相互作用のもと腺上皮細胞からの各種サイトカイン、増殖因子によって大きな影響を受けていると予測される。当該年度においてエストロジェン誘導間質増殖モデル精嚢および前立腺腹葉などの副性器を用いて検討をした。 1)3週齢去勢ラットに微量エストロジェンを徐放的に投与し、TGF-β1およびサイトケラチンのエストロジェン反応特性を検討した。精嚢腺上皮には基底細胞としての特性(基底細胞特異蛋白サイトケラチン34βE12抗体で陰性)を持つ上皮細胞が増殖し、これらの細胞がTGF-β1に強く陽性反応を示す結果を得た[Tohoku J Exp Med,1999,187,25-35]。 2)エストロジェンレセプター(ER)βのポリクロナール抗体を作製し正常ラット雄性、雌性の副性器における免疫組織学的検討を行いこの抗体の臓器特性の基礎的データをまとめた〔Kitakanto Med J,1999 49(6),409-412〕。ERβ蛋白は前立腺腹葉に顕著に発現しているが精嚢では少ない。これまでの検討からERα蛋白は精嚢では顕著に局在するが前立腺腹葉ではほとんど確認出来ない。この結果を踏まえてERの作用機序解明にむけてさらに検討を進める予定である。 3)ERα、ERβの発現を検討するためにオリゴプローブを作製しRapid In situ Hybridization法で検討した。精嚢について発現が明らかになりつつある。ERαmRNAの発現は去勢(去勢後3週)ではほとんどないが微量エストロジェン投与により間質、上皮ともに顕著に発現し2日をピークとして減弱してくる。ERβは発現が少ないが投与3日をピークに消失する。これらの傾向は上皮直下周辺間質細胞に3日頃から出現する好酸球に関係するかもしれない。上皮-間質相互作用解明にむけさらに検討を進める予定である。
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