研究概要 |
I.幼若ラット実験モデルでの検討:(1)エストロジェン(E2)で増殖した精嚢は基底細胞特異蛋白サイトケラチン34βE12抗体で強く染色され基底細胞の性質を持つ事を示し、この細胞がTGF-β1抗体に強く陽性反応を示すことを確認した(Tohoku J Exp Med,1999)。(2)ERβ抗体を作製しラット雄性、雌性復性器において免疫組織学的に比較検討した。ERβは前立腺に顕著に発現しているが精嚢には少ない。ERαはこれまでの実験から前立腺では発現していないが精嚢では顕著に発現している。この結果は前立腺,精嚢においてERα、ERβが相補的に関与している事を示唆した(Kitakanto Med J,1999)。(3)real-time PCR法の検討で精嚢のERα発現量は正常(6週齢)と比較し去勢3.9倍、E2投与7.6倍であった。ERβは少ない。前立腺のERα発現量は少ないがERβは正常と比較して去勢1.9倍、E2投与10.3倍であった。(4)Rapid In-situ hybridization法で検討した。精嚢のERα発現はE2投与により2日をピーク顕著に発現するが7日では抑制された。ERβの発現は投与3日をピークに発現し7日には完全に抑制された。 II.成熟ラットでの検討:前立腺において去勢後12時間でERβmRNA発現は減少し48時間では正常の3.7%に減少した。また去勢後7日よりアンドロジェン投与し、投与12時間でERβmRNAは4〜5倍増加した。これらの結果はERβのアンドロジェン依存性を示唆した(J Urol,2000)。 III.ヒト前立腺肥大腺腫由来の上皮培養細胞での検討:10-8Mエストロジェンに12時間曝露した。ARmRNAの発現はコントロールの7倍発現した。このことはARがエストロジェンにup-regulateされる事を示唆した。10-7Mアンドロジェンで曝露したERβmRNAはコントロールの7倍発現した。これらの結果からヒト前立腺肥大腺腫においてAR-ERクロストークの存在が示唆された(J Urol,1999)。
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