研究概要 |
本年度は主に、ヒト腎癌患者より得られた腎血管を用いて、α_1受容体各サブタイプに対するプローブを用い、in situハイブリダイゼーションで腎血管内の各サブタイプの局在を検討した。 手術時一塊として得られた摘出腎から腎血管を採取し、ただちにOCT compoundに包埋し、-80℃で保存した。また一部は分子生物学的材料としてただちに液体窒素にて凍結し-130℃で保存した。標本は30歳代〜80歳代まで各年代それぞれ3〜4例ずつ採取した。 次いで、α_1-アドレナリン受容体サブタイプ(1a,1b,1d)のRNA probesを作成し、先の腎血管標本について、in situハイブリダイゼーションを行なった。方法を次に略記した。 i) RNAプローブをin vitro transcriptationでDigラベルした。 ii) 腎血管組織を10μmに薄切後、4%パラフォルムアルデヒドで固定し凍結切片を作製した。 iii) プロテナースK(50μg/ml)および、acetylation処理し、除蛋白、非特異反応の除去を行った。 iv) RNA probesで45℃15時間ハイブリダイゼーションを行った。 v) RNase処理の後Dig-ELISA法により反応部位を検出した。 腎血管ではα_1-アドレナリン受容体の全サブタイプのmRNAが特に平滑筋に認められた。血管の太さによる局在の変化はあまりなかった。全体的にはα_<1a>-アドレナリン受容体の発現が強く、α_<1b>-アドレナリン受容体は弱かった。糸球体には若干の陽性所見を認めた。近位尿細管や遠位尿細管上皮の胞体にはこれらの受容体の発現は少なかった。
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