Interleukin1-β converting enzyme(ICE)は、システインプロテアーゼで、マウスのICE遺伝子(mICE)を過剰発現させることにより異種由来を含む数種の細胞株でapoptosisを誘発することが報告されている。Renca(マウス腎癌)由来細胞は全て、RT-PCRで検出可能なレベルの内因性ICEを発現しており、増殖による細胞密度の増加に伴い自発性のapoptosisが起こり、DNAの断片化が観察された.mICE導入細胞株では、対照細胞に比し早期に、低い細胞密度で、自発性のapoptosisが起こった。Renca由来細胞の同所性の移植による腫瘍径は、対照細胞の比較で、導入細胞で有意に小さかった。さらに生着のみられた個体の腫瘍径を、Renca ICE1群(n=7)とRenca cont1群(n=6)で経時的に比較すると、3週目より有意な差が生じ、5週目には、差が著明になった。Renca ICE1群では、個体により増大の停止や縮小が見られ、組織学的観察により広範なapoptosisを認めた。なお、Renca cont1群では、腫瘍は、個体が死に至るまで無制限に増殖を続けた。この固形腫瘍で、内因性ICEの発現をRT-PCRにて検出したが、発現は認め得なかった。更に固形腫瘍として成立したRenca細胞を再び組織培養に戻してICEの発現を見ると、ICEはRT-PCRでも検出不能となっていた。これを脱メチル化薬剤で処理すると、再びICEの発現が見られ、かつ細胞はapoptosisを起こした。ICEの過剰発現は、直接的にapoptosisを引き起こすのではなく、apoptosisを誘導する刺激を増強すると考えるのが、妥当であると思われた。
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