多発性嚢胞腎の疾患遺伝子PKD1のマウスホモログであるpkd1遺伝子を129マウスゲノムライブラリーからクローニングし、エクソン3-5を欠失するターゲッティングベクターを作成し、ES細胞に導入した。目的とするエクソンを相同組換えにより欠失させたES細胞を選択し、マウス初期胚に注入し、さらにこの初期胚を偽妊娠雌マウスに子宮移植し、キメラマウスを作成した。キメラマウスとB6/BLマウスの交配により遺伝子欠損動物を作成した。サザンブロティング、PCRにより目的とするpkd1遺伝子の欠損を確認した。ホモ遺伝子欠損動物は胎生致死でありE13.5-15.5に死亡することが観察され、特徴的な表現型としてはDouble outlet of right ventricleとその結果と思われる心不全、および末梢血管での出血が観察された。したがって、pkd1遺伝子は発生上必須の遺伝子機能を持ち、特に心臓の形成と血管の脆弱性に関与することが示唆された。この知見は、多発性嚢胞腎の病態生理の一端を解明するものと考えられた。
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