1.前立腺内に発現が確認されている10種類の神経ペプチド、すなわちcalcitonin gene-related peptide(CGRP)、gastrin-releasing peptide(GRP)、substance P(SP)、neuropeptide Y(NPY)、vasoactive intestinal polypeptide(VIP)、calcitonin(CT)、jeucine-enkephalin(L-ENK)、methionine-enkephalin(M-ENK)、glucagon及びparathyroid hormone-related protein(PTH-rP)について、ヒト前立腺癌細胞株PC-3細胞とDU-145細胞の基底膜浸潤に及ぼす影響をトランスウエルチャンバーを用いて検討を行った。GRP、CGRP及びPTH-rPが、前立腺癌細胞の基底膜浸潤を亢進させ、substance P(SP)が逆にPC-3細胞の浸潤を抑制することを明らかにした。またその作用機序として、主に運動能の亢進または抑制によることを明らかにした。一部の神経ペプチドが、前立腺癌の浸潤・転移に影響を与えている可能性が示唆された。 2.chromogranin A(pancreastatin)fragmentが、アンドロゲン非依存性前立腺癌細胞(PC-3、DU-145細胞)の基底膜浸潤を亢進させ、アンドロゲン依存性前立腺癌細胞(LNCaP細胞)の浸潤には影響をあたえないことを明らかにした。またその作用機序として、前立腺癌細胞の運動能の亢進、u-PA mRNAの発現亢進及びu-PAの産生亢進によりことを明らかにした。chromogranin A及びそのfragmentも前立腺癌の浸潤・転移に関与している可能性が示唆された。
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