研究概要 |
排尿神経回路の加齢による変化を解明するために、まず、高齢者に多くみられる前立腺肥大症に代表される尿道閉塞による膀胱過活動に注目した。この過活動は膀胱平滑筋自体の変化以外にも膀胱神経支配の変化も示唆されている。その変化の一つとして、脊髄排尿中枢レベルでは神経伝達物質の中のタヒキニン受容体に変化が起こっていることが証明されている。今回、われわれは中枢から末梢までの神経支配について統合的にアプローチするために、まず、中枢レベルではタヒキニン受容体にどのような変化が起こったかを無麻酔下のラットで膀胱内圧検査を行い検討した。 尿道閉塞後、6週経過して膀胱過活動が起きたラットに膀胱内圧検査を施行しながら、RP67580(ニューロキニン1受容体拮抗薬)もしくはSR48,968(ニューロキニン2受容体拮抗薬)、もしくは両者を左側脳室内に投与して、内圧曲線上での変化を検討して正常のラットの場合と比較した。 正常ラットのおいては、内圧曲線上変化はほとんど認めなかったが、尿道閉塞により膀胱過活動が起きたラットの脳室内に投与したRP67580(2nmol/rat)もしくはSR48,968(2nmol/rat)、もしくはRP67580とSR48968(2nmol/rat)の混合投与でより膀胱活動が抑制された。 この結果は、正常のラットと比較すると尿道閉塞ラットにおいては中枢レベルで有為にそのタヒキニン受容体の感受性に差があることが判明した。このことは、尿路閉塞が中枢の神経伝建物質の中のタヒキニンにも変化を与えて膀胱過活動をおこしている可能性を示している。
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