研究概要 |
MDCK樹立細胞株を用い、in vitro系にて人腎結石形成モデル作製した。培養法は単層静置培養法、3次元軟寒天内培養法、およびCollagen gel培養法によった。 結石はいずれの培養法によっても細胞シートのbasal側に形成され、それは腎尿細管の基底膜層に相当する部位であった。結石の形成時期はconfluent形成後5日目から観察可能であった。また、結石成分はX-線解析法および赤外線分析法により、リン酸カルシウム結石であった。 筆者らの研究では結石形成部位は腎尿細管の基底膜層に相当する部位が原基であったが、結石形成部位には諸説があるため、double chamberr法によってMDCK細胞シートの上部(腎尿細管の管腔側)と下部(腎尿細管上皮細胞基底膜層)にそれぞれCa^<2+>濃度(0.3,1.4,3.0mM)の組み合わせでCa^<2+>の移動動態を測定したところ、両層の濃度勾配に関係なく、上層から下層へとCa^<2+>の移動がみられた。これらの所見から腎尿細管上皮細胞はCa^<2+>を管腔側から基底膜側に能動的に輸送していることを意味し、基底膜側に集積したCa^<2+>がcollagenやGAGsなどの物質に結合し、結石原基となることを示唆した。 今回、in vitro系で出来た結石はリン酸カルシウム結石であったが、人結石の70〜80%は蓚酸カルシウム結石であることから、本モデルの作製を試みた。非酵素介在性のsodium oxalateおよびascorbic acidと酵素介在性のethylene glycolおよびsodium glycolateを100μMから1nM濃度幅で20日間培養した。いずれの系も結石はリン酸カルシウムから出来ていた。今後、酵素、pHなどを考慮して研究をしていきたい。 さらに、腎結石患者の30〜50%は再発をすることから、結石形成素因が考えられている。本分野の研究はほとんどないので、著者らは、MDCK細胞株から60個のクローンを採取し、好結石形成株2株と弱結石形成株2株を採取し、diffrential display法によって両者のDNAラダーの比較をしたところ、両者間で幾つかの異なるDNAのあることがわかった、今後はこれらのDNAを採取し、解析すると共に両者の細胞にtransfectしてそれらのgeneの発現をみていきたい。
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