研究分担者 |
賀本 敏行 京都大学, 医学研究科, 助手 (00281098)
筧 善行 京都大学, 医学研究科, 助教授 (20214273)
日合 弘 京都大学, 医学研究科, 教授 (10073131)
羽渕 友則 秋田大学, 医学部, 助教授 (00293861)
岡田 裕作 滋賀医科大学, 医学部, 教授 (20127062)
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研究概要 |
1)限局性前立腺癌の中で触知不能前立腺がんの病態の解明を多施設共同研究としてレトロスペクティプに行い,その70%程度は何らかの治療を要する臨床癌であることを明らかにした.しかし,治療を必要としない微小がんや,当面の保存的経過観察が可能ながんが含まれていることも判明した.その中で臨床的に治療を必要とするもの,即ち予後(進行)を予測するマーカーとして,第1に経直腸的システマティック生検の病理所見とPSA-density(PSAD;PSA値を前立腺重量で除した値)による腫瘍量や拡がりについて検討した.その結果,腫瘍体積が0.5ml以下の小病巣を予測するためのPSADのcut-off値を0.2と設定してnegative predictive valueは58.3%であり,病巣の大きさの予測には生検病理所見とPSADのみでは不十分であることが判明した.一方で,生検病理所見から腫瘍体積を予測できるかを,術前内分泌療法を施行しなかった限局性前立腺癌に対し前立腺全摘術を施行した全割標本から検証したところ,現在の方法(経直腸超音波ガイド下経直腸生検)では比較的大きな腫瘍がありながら陰性(sampling error)にでる領域は前立腺尖部で多い(9/21;42.9%)ことが判明した. 2)腫瘍の進行を推定するマーカーとして血清PSA値の倍加時間(PSADT)を測定し,臨床経過について検討した.その結果,長期間観察可能であった症例においてのPSADTは,その期間を分割したおのおののPSADTでは予想が困難である症例があることが判明した.このことはPSADTを測定するための至適観察期間の設定は今後の検討課題である. 3)PSAとα1アンチキモトリプシンとの複合体であるPSA-ACTの前立腺がん診断における有用性についてtotal-PSAとの比較で検討した.前立腺生検をうけ組織学的所見の確定した234例の診断効率をROC曲線で検討したところ,total PSAが0〜99でのROC曲線下面積はtotal PSA,PSA-ACTでそれぞれ0.728と0.746(p=0.006)であり,0〜20ではそれぞれ0.658と0.634(p=0.024)と有意にPSA-ACTが優っていた.total PSAが4〜10のgray zoneでは両者のROC曲線下差はないものの,total PSAが4.0と10.0,PSA-ACTが3.2と9でpredictive valueを求めるとそれぞれNPV:0.86とPPV:0.40,NPV:0.88とPPV:0.44であり,PSA-ACTの有用性が示唆された.限局性前立腺癌か否かの診断にはPSA-ACT/PSAは有用ではなかった. 4)前立腺全摘症例におけるPSA,Bcl-2,p53,ChromograninAにつき免疫組織化学染色を施行したが,陽性例が少なく予後との相関は検討できなかった.その理由として全摘症例が早期のものが多いことが考えられた.
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