腎細胞癌の生物学的特性を知る為には実際の腎細胞癌の臨床的解析が重要である。我々はまれな例ではあるが脳に転移する腎癌について臨床的検討を加えた。その結果、腎癌の脳転移は一般的腎癌に比較して、より男性に多く傾向がある事、前治療としてのインターフェロンやIL-2の投与が特に危険因子とはならない事を明らかにした。従来、我々の施設においても行なわれていたLAK療法と免役療法も脳転移の危険因子でない事が今回の我々の報告によって明らかとなった。当施設では進行肝癌に対して以前よりLAK療法、インターフェロン療法を積極的に行っているが、IL2を用いた治療法にはIL2の副作用がつきまとうため、この副作用を軽減して治療効果を向上させるべくIL7の併用両方の可能性をin vivoにおいて調べた結果非常に有効との結果を得た。治療に関する研究はこの様に順調に進行しているのが現状である。これら臨床的現象に伴う遺伝子変化の検索については新規に手術療法にて摘除した腎癌の凍結検体の保存とDNA・RNAの抽出およびその収集を行なっているところである。LOH解析の為には腫瘍部分からのDNAと正常組織(末梢血リンパ球でもよい)からのDNAが必要であり、現在そのbankingを行っているところである。新規症例だけで約30検体のbankingが終了している。腎癌特異的遺伝子の単離については、正常部分と腫瘍部分のRNAを用いてDifferential Display-RT-PCR法によりCloningを試みているところであるが、Cloningされた遺伝子断片のsequeuceを順に行っている。
|