研究者は平成7年度科研一般(c)07671731および平成8-9年度科研基盤研究(c)(2)08671816の交付を受けて、BALB/cマウス自然発生腎細胞癌(Renca)にMFGretroviral vectorを用いてIL-12を分泌する腫瘍細胞を作成し、この細胞の抗腫瘍作用を検討した。 1. 腫瘍治療モデル BALB/cマウスの右側皮下に10^5個のRenca親株を接種し、対側皮下にIL-12遺伝子導入株(Renca IL-12)を10^5個から10^7個接種した結果、10^5個の系で4匹中1匹(20%)、10^6個で10匹中7匹(70%)、10^7個で7匹中4匹(58%)が再接種した野生型Renca細胞を拒絶し、Renca細胞に対する特異免疫を獲得した。 対側に野生型Renca細胞を接種したマウスは3週までに5匹とも腫瘍を形成したが、同時にRenca IL-12細胞を接種したマウスでは、腫瘍形成がやや遅く6週まで腫瘍を形成しないマウスが存在した。左側腹部の腫瘍の大きさは、Renca IL-12を対側に接種したマウスで小さく、対側に接種したRenca IL-12細胞は遠隔部位にある腫瘍細胞に作用することが判明した。 2. 今後の計画 肺転移治療モデルを作成するために、現在BALB/cマウスの尾静脈から10^5個のRenca親株を接種し肺転移巣形成能を見る基礎的検討を行っている。この系が完成されれば、右側皮下にRenca IL-12を10^5個から10^7個接種し、肺転移の制御および抗腫瘍効果を検討する。さらに、adenovirus vectorを用いて、in vivoでの遺伝子導入を試み、より臨床に即した実験系を用いて、IL-12を用いた腎細胞癌に対する遺伝子療法の意義を解明する。
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