研究概要 |
(1) In situ RT-PCRによる遺伝子発現の検討 In situ RT-PCR法により、癌の浸潤・転移に関連する遺伝子発現の局在を簡単かつ正確に明らかにすることを目的として、当科で樹立した浸潤性尿路上皮癌細胞株をSCIDマウス膀胱に同所移植し、その組織を用いて,マトリックスメタロプロテアーゼの遺伝子発現の局在を決定するために、プライマーを蛍光標識し、nested-PCR法を組み合わせたIn situ RT-PCR法を行っている。現在その条件設定について詳細に検討中である。 (2) 尿路上皮癌における活性型マトリックスメタロプロテアーゼ(MMP)の発現の検討 ゼラチンザイモグラフィーを用いて尿路上皮癌から摘出した組織におけるMMP-2およびMNP-9の発現について検討したところ、活性型MMP-2の発現は、表在性腫瘍に比べ浸潤性腫瘍でその発現は著明に増強しており、組織学的異型度についてはGrade3で強い発現が認められた。MMP-9および潜在型MMP-2の活性にはそのような傾向は見らなかった。また、活性型MMP-2の活性強度をゼラチンザイモグラフィーの結果から半定量化し予後と比較したところ、活性型MMP-2の強い発現を認めた群では予後不良だった。 (3) uPA(urokinase-type plasminogen activator)、PAIM-1(plasminogen activator inhibitor-1)およびu-PAR(plasminogen activator receptor)遺伝子発現の検討 尿路上皮癌組織におけるuPAとPAI-1およびu-PARの遺伝子発現を解析し,臨床的意義について検討した。尿路上皮癌患者の手術から得られた腫瘍部組織を用いて半定量的RT-PCR法によりuPA,PAI-1,uPARの遺伝子発現を解析し,病理組織学的所見および予後との関連について検討した。uPAとuPARは浸潤性尿路上皮癌で有意にその発現は増強していた。異型度ではGradeの上昇に従いuPA,PAI-1,uPARの遺伝子発現は増強する傾向にあった。予後との検討では、浸潤性尿路上皮癌患者群に限った場合でも、uPA遺伝子高発現群は有意に予後不良であり、uPAは浸潤性尿路上皮癌の予後予測因子になりうる可能性が示唆された。
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