研究概要 |
精原細胞から精子にいたる各種生殖細胞系列において、すでに多くの遺伝子が報告されているものの、その大部分は体細胞においても発現しており生殖細胞に特異的に発現しているものは少ない。我々はすでにセミノーマのcDNAライブラリーより、セミノーマおよび精巣にて特異的に発現しているZincフィンガー遺伝子であるZFS-1をクローニングしている(Cancer Genet Cytogenet,1997)。ZFS-1は3'側の部分配列しか分かっておらず、今回我々は、ZFS-1をプローブとしてヒト精巣のcDNAライブラリーをスクリーニングし開始コドンを含む最全長塩基配列2371塩基対を決定し、この遺伝子をTSF(Testis Specific zinc Finger gene)と命名した。TSFは595アミノ酸をコードし、N末端側にKRABドメインをC末瑞側にZincフィンガーを有し、間にスペーサー領域を持ち、ZNF91 KRAB zincフィンガーファミリーの特にZNF85と高い相同性を持つことが判明した(平成10年、第86回日本泌尿器科学会にて発表)。この生殖細胞特異的遺伝子であるTSFの発現を当初男子不妊症の患者で行う予定であったが、精巣組繊を十分に得られないことと、RT-PCRにより定量的に測定できなかったため精巣腫瘍、樹立された細胞株を用いてノーザンブッロット法にて検討した。その結果セミノーマおよび正常精巣では強い発現が見られたが、同じ精巣腫瘍でも絨毛細胞癌では発現がほとんど見られなかった。またBerllefroid等との共同研究でも同様の結果が得られた。(Poncelet DA,DNACellBiol,1998)
|