正常VHL蛋白が蛋白キナーゼCと結合することが知られていたが、その結合部位がVHLのβ-ドメインであることをまず明らかにした。さらに昆虫ステロイドホルモンであるEcdysteroidによる標的遺伝子発現系により、VHL遺伝子が不活化している腎癌細胞、UM-RC-6に正常VHL蛋白質を誘導、発現させる系を作成し、この系により細胞動態への影響を調べた。野生型VHLを誘導したUM-RC-6細胞では、細胞の増殖の抑制が認められた。また、Laserscan Cytoscanmetryを用いた細胞周期の解析では、野生型VHL蛋白の誘導により細胞周期がG1→Sで停止することが確認された。G1→Sへの移行を制御しているp27(Kip1)の発現レベルをウエスタンブロット法で検討したところ、VHL蛋白の発現と無関係にほぼ一定のレベルを保っていた。以上の結果より、正常VHL蛋白はp27を介さない経路で細胞周期がG1/G0期からS期へ移行するのを抑制する機能を持っていると考えられた。
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