研究課題/領域番号 |
10671493
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研究機関 | 慶応義塾大学 |
研究代表者 |
橘 政昭 慶應義塾大学, 医学部, 専任講師 (70129526)
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研究分担者 |
村井 勝 慶應義塾大学, 医学部, 教授 (90101956)
朝倉 博孝 慶應義塾大学, 医学部, 助手 (50175840)
中島 淳 慶應義塾大学, 医学部, 専任講師 (10167546)
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キーワード | サイトカイン産生腫瘍 / 細胞死誘導 / 遺伝子治療 |
研究概要 |
転写活性因子の蛋白であるnuclear factor-kappa B(NF-κB)は生体における免疫あるいは炎症反応の主要な調節因子として注目されている。一方、腫瘍細胞におけるサイトカインの産生はその増殖・進展に関連したシグナル伝達を説明する因子として重要である。本研究では、サイトカイン産生腫瘍に注目し、これら細胞における転写活性物質であるNF-κBを細胞レベルで抑制することにより、細胞に生じる影響につき検討した。 サイトカイン産生膀胱癌細胞株(KU-19-19)および腎細胞癌株(KU-19-20)を標的細胞とした。NF-κBの拮抗蛋白であるI-κBαのcDNAをアデノウイルス・ベクターにより遺伝子導入し、その際の細胞増殖を観察した。また培養土清中の各種サイトカイン濃度を測定した。細胞障害を来したものには、fragmented DNA ELISAおよびTunel法によりapoptosis誘導の可能性を検討した。 サイトカイン産生腫瘍であるKU-19-19、およびKU-19-20細胞に対しI-κB cDNAをアデノウイルス・ベクターによりtransfection後48時間において著明な細胞障害か認められた。フローサイトメトリーによるbromodeoxyuridine標識率の解析では濃度依存的にI-κBをtransfectionした群に標識率の低下が認められ、培養上溝中の各種サイトカイン濃度も著明に減少した。またfragmented DNA ELISA およびTunel法の解析では、I-κBをtransfectionした群にapoptosisが誘導されているものと考えられた。 転写活性因子であるNF-κBを拮抗蛋白であるI-κBのtransfectionにより抑制することにより、サイトカイン産生腫瘍細胞においてapoptosisが誘導された。このことは、サイトカイン産生腫瘍においては、その産生のシグナルを抑制することにより何らかのdeath signalが生じる可能性を示唆するものと考えられた。
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