研究課題/領域番号 |
10671496
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研究機関 | 東京慈恵会医科大学 |
研究代表者 |
仲田 浄治郎 東京慈恵会医科大学, 医学部, 講師 (60130184)
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研究分担者 |
山口 裕 東京慈恵医大, 医学部, 助教授 (60057073)
松浦 知和 東京慈恵医大, 医学部, 助手 (30199749)
古田 希 東京慈恵医大, 医学部, 講師 (70190155)
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キーワード | 褐色細胞腫 / 培養細胞 / 微細形態 / 内分泌機能 |
研究概要 |
【目的】ヒト由来の褐色細胞腫を用いた細胞レベルの研究解析は、神経細胞の分化・増殖の機構を解明するために有用である。ヒト褐色細胞腫の初代細胞培養を試み、培養細胞の形態学的変化や培養液のカテコーラミンの濃度を検討し、神経成長因子(nerve growth factor:NGF)やステロイドホルモン添加の培養細胞へ及ぼす影響をみた。【方法】症例1は37歳男性、症例2は48歳男性で、血中アドレナリン、ノルアドレナリンが高値の褐色細胞腫である。腫瘍をdispase溶液にて消化し、単離細胞を回収し、10%FBS添加Williams-E培養液に細胞を希釈し、plastic dish上に播種した。2週間後にヒトrecombinant型NGF 100ng/ml、あるいはdexamethasone 10^<-5>Mを添加した。培養液のカテコーラミン3分画を測定し、培養細胞の形態は倒立顕微鏡および電子顕微鏡JEOL1200EXにて観察した。【結果】培養液のカテコーラミンの濃度は、症例1では培養6ヵ月後、症例2では約1ヵ月、特にノルアドレナリンは高値が維持された。NGFを添加すると無添加群に比べ培養液中のカテコーラミンの濃度は高い値が維持された。倒立顕微鏡で観察すると、培養1日目には胞体が暗色な小さい細胞であった。培養数日後には、数本の神経突起を伸ばし、他の細胞に接合しているのが観察された。培養細胞は、5ヵ月と10ヵ月と長期間にわたり維持された。NGFを培養液の2週間目に添加すると神経突起はより鮮明に促進され、dexamethasoneを添加すると神経突起の成長が抑制された。電子顕微鏡では、もとの腫瘍細胞に認めた200nm前後のカテコーラミンを含むと思われるelectron denseな顆粒を培養細胞にも認めた。NGF添加した電顕像では神経様突起と思われる像が随所にみられた。【結論】成人のヒト褐色細胞腫の培養細胞に対して、NGFは形態的にも機能的にも影響を及ぼすことがが判明し、副腎皮質ホルモンは副腎髄質を形態的に制御している可能性が示唆された。
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