生殖泌尿器の欠損部に対して、一般的には体の中の他の部分、たとえば膀胱壁などの組織を採取して利用するが、もともとの器官が持つ機能を完全に保持させることは不可能に近い。吸収性ポリマーに膀胱の平滑筋細胞を播種して培養した報告がある様に昔から自己組織は用いられてきたが、細胞を傷害することにより内因性サイトカインを活性化し、それによって分裂能を高め尿管の上皮の再生を目指すといった考え方を我々は導入した。今回は特に泌尿器の中でも尿管に注目し、組織工学的手法を用いて生体親和性の良好な代用尿管の開発にあたる。Tissue Engineering (組織工学)で組織を再生する場合、細胞、細胞外マトリックスおよびサイトカインが重要な役割を果たす。我々は、内因性サイトカイン活性型代用尿管の開発を目的にしたが、さらにbasic fibroblast growth factor(bFGF)による尿管上皮再生促進の可能性をも検討した。我々の基礎的in vivo実験では尿管上皮を機械的に剥離脱落させても、血行が良い場合には上皮が再生することが可能であることを観察した。また尿管ステントの挿入実験において、ステントが尿管壁に埋没しても、遠隔期には尿管内面には移行上皮が全長にわたって低く再生するといった組織再生の観察も良好に行われている。我々の研究は、現在、代用尿管がないために漏孔を作成してきた患者の"生活の質"を向上させることに十分に貢献すると考える。
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