不全臓器の機能を補うための医療のひとつとして移植医療がある。腎臓に対する腎移植、心臓に対する心移植、肝臓に対する肝移植はすでに臨床レベルで確立した治療法である。尿管は腎臓で生成された尿を膀胱まで運搬する管状の臓器である。尿管は実質臓器ではなく機能的に不全状態に陥ることはないが、先天性疾患、炎症、悪性腫瘍などのため通過が傷害されると、水腎、水尿管症を引き起こし、腎機能に重大な影響を及ぼす。この尿管の通過障害が外科的に修復されることが不可能な場合、尿管の移植は行われておらず、代用尿管が必要となる。現在のところ理想的な人工尿管はなく、実際には尿路変向術または自己腎移植術が必要となる。以上の背景のもとに、われわれは人工尿管の基礎実験とともに尿管上皮再生の経時的観察を行ってきた。この結果をさらに発展させ、metallic stentの尿管補填材料としての可能性を検討した。我々が最初に検討した生体及び人工適合性材料は、内因性サイトカインを遊走させる可能性は否定できないが、内腔の保持、尿の非漏出性という点で問題があった。次に検討したメタリックステントの尿管留置実験では、7ヵ月という比較的長期において良好な移行上皮の再生が観察された。しかし再生上皮の過形成のために水腎症を来した症例もあり、この原因を解明しつつ、今後の人工尿管の開発を行うことが必要であろう。
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