今回の研究では内因性サイトカイン活性型代用尿管の開発を目的としたが、最初に検討したTF(Tissue fragmented)plyesterグラフト、アルコール保存頚動脈グラフトは、人工尿管の材質として適当でないことが判明した。しかしメタリックステントを用いた留置尿管部の開存状態および移行上皮の再生過程の観察においては、十分な成果が得られた。すなわちステント留置時の操作で、完全に上皮は脱落し尿管壁にも障害が生じ、約1週後の所見でも強い炎症所見が残っていた。2ヶ月以降では、炎症はすでに消失しており、6ヶ月、7ヶ月においては、良好な再生上皮の存在が確認された。しかし症例によっては、再生上皮過形成のために尿管が狭窄を起こし、水腎症をきたす可能性も判明した。このメタリックステントが、今後尿管狭窄の治療法の1つとして臨床応用の可能性を充分有していると考えられたが、狭窄を生じたケースではそのメカニズムを解明することが残された課題である。我々が最初に検討した生体及び人工適合性材料は、内因性サイトカインを遊走させる可能性は否定できないが、内腔の保持、尿の非漏出性という点で問題があった。次に検討したメタリックステントの尿管留置実験では7ヶ月という比較的長期において良好な移行上皮の再生が観察された。しかし再生上皮の過形成のために水腎症を来した症例もあり、この原因を解明しつつ、今後の人工尿管の開発を行うことが必要であろう。
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