平成11年度までに、尿路感染起縁大腸菌が保有するタイプ1線毛の吸着素(adhesin)の違いによりサルの尿路粘膜上皮に対するbinding siteが異なることを見出し、その違いによるnew type of functional heterogeneityを検討した。平成12年度は、11年度に引き続きヒトの臓器を用いた検討を継続し、症例数を増やしてサルとヒトの尿路粘膜上皮に違いがないことを調べた。 1)当院泌尿器科で手術時に摘出されたヒトの臓器(腎・尿管・膀胱・尿道・前立腺など)を凍結標本として保存した。 2)タイプ1線毛保有大腸菌とそのmutantに蛍光染色を施した。 3)蛍光顕微鏡を用いたbinding siteを観察し、サルとヒトとの相違を検討する。 その結果、尿管・尿道についてはサルの場合以外にもヒトの間で個体差が生じていた。前立腺は構造と感染成立の機序が複雑なため現在までに一定の傾向を掴めていない。これらの研究結果は、第88回日本泌尿器科学会総会、第9回日本逆流性腎症フォーラムの特別講演で報告した。
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