研究概要 |
(目的)腎細胞癌に特異的,あるいは高発現する遺伝子の単離を試み,得られた遺伝子の産物を抗原とする抗体を作製し,腎細胞癌から遊離する抗原の検出の可能性を検討した。 (材料と方法)腎細胞癌,正常腎組織のRNAを材料としたRT-PCRを行い,発現に差の認められたバンドの遺伝子の抽出,塩基配列を決定し,既知の遺伝子との相同性を検査した。同時にNorthern blot法を実施して正常腎組織と腎細胞癌における発現を検査した。 (結果)腎細胞癌に特異あるいは高発現する遺伝子の検索:腎細胞癌・正常腎組織より抽出したRNAを用いてDifferential display法を行った。その結果,腎細胞癌のRNAを用いたレーンに約100〜400bpの111個の特異的なバンドが観察された。これらのバンドを切り出し再増幅した結果,29個が再増幅され,そのうち12個をクローニングする事ができた。得られたクローンの遺伝子配列を決定し,NCBI GenBankの相同性検索ソフトBLASTにて登録遺伝子との相同性を検査した。検査した12個のうち2個はHLA-DR alpha chain(99%),Thymosin beta-10(99%)と相同性が認められた。しかし残りの10クローンは相同性ある遺伝子は認められなかった。 ノーザンプロット解析:腎細胞癌組織3例と正常腎組織2例のRNAを対象として,クローニングされた12個の遺伝子の発現についてNorthern blot法により検索した。今回クローニングされたHLA-DR alpha chain,Thymosin beta-10及び,2個の未知の遺伝子では正常腎に比較して腎細胞癌において強い発現が認められた。
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