研究概要 |
今年はノックアウトマウスを用いる前段階として薬剤を用いてAT1受容体をブロックし正常ラットと糖尿病ラットを比較した。麻酔下ラットにおいてAT1拮抗薬(ロサルタン)の輸入および輸出細動脈に対する拡張作用をWistarラット(正常ラット)およびSTZラット(ストレプトロゾシン誘発糖尿病ラット)において検討した。macroとmicrocirculationを比較するために、我々の開発したペンシル型ニードル生体顕微鏡で糸球体微小循環パラメーター(輸入・輸出細動脈径)を血行動態パラメーター(脈拍、血圧、腎血流量)と同時に経時的に測定を行った。Wistar群(n=6)においてAT1拮抗薬1,3,10mg/kgを10分間隔で静脈内投与した。平均血圧は3,10mg/kg投与によって減少したが、腎血流量は1mg/kg投与時より用量依存的な増加が見られ、腎血管床に対する特異性が確認された。また輸入、輸出細動脈径にも1mg/kg投与から用量依存的な拡張が見られた。しかしながら輸入/輸出細動脈比に差は見られずAT1拮抗薬は輸入および輸出細動脈を同程度に拡張させることが示された。STZ糖尿病群(n=6)においてAT1拮抗薬1,3,10mg/kgi.v.投与後の平均血圧は、1mg/kgより用量依存的な減少が確認された。basalな腎血流量および腎重量はWistarに比して増加が見られた。AT1拮抗薬投与により腎血流量は用量依存的に増加した。輸入細動脈径はbasalにおいて13.3±0.8μmであり、Wistar(9.4±1.0μm)に比して拡張していたがAT1拮抗薬の投与によっては変化が見られなかった。このとき輸出細動脈径は用量依存的に拡張していたため、輸入/輸出細動脈比には減少傾向が見られた。ATl拮抗薬はSTZ糖尿病ラットにおいては輸出細動脈を特異的に拡張させるが10mg/kg投与時の輸出細動脈の拡張率はbasalの22.9±6.7%でありWistarにおける拡張率32.0±8.8%に比して少なかった。AT1拮抗薬は正常ラットにおいて輸入細動脈、輸出細動脈を拡張させた。一方、糖尿病ラットでは輸入細動脈に対する拡張作用は消失したが、輸出細動脈に対する拡張作用は正常ラットと同様であり、保持されていた。結果、糖尿病ラットにおいて輸入細動脈/輸出細動脈比が減少した。本方法によって糖尿病ラットのhyperfiltrationを示唆する、輸入細動脈の特徴的な拡張を生体位において確認することができた。この特徴はAllによる輸入細動脈の収縮性の誠弱が関与する可能性があること、AT1受容体拮抗により是正されることが示された。
|