研究概要 |
本研究対象は、産婦人科及び小児科領域で、follow-upされている、臨床及び細胞遺伝子学的に性分化異常症が疑われた40家系、原発性無月経症例104家系(性腺分化異常68例、性管分化異常23例、、男性型外性器4例、その他の機能不全9例であり、そのうちターナー症17例、XY女性11例を含む)、および早発閉経症例20家系で、本研究に対するインフォームドコンセントを得た上で、詳細な細胞遺伝学的検討(星、藤本)、性分化関連遺伝子及び座位の有無の検討を行った(星、藤本)[平成10年度]。 上記結果を踏まえ、平成11年度は、遺伝子の欠失を認めない症例についてはゲノムDNAをPCR法により増幅し、エクソン、イントロン各部位の塩基配列を直接決定し、点突然変異などの異常の有無を解析した。また、臨床的多型性を遺伝子レベルでの異常と対応させ検討した(星)。家系解析として、近年急速に発展している分子生物学的手法、とりわけPCR、PCR-RFLP、PCR-SSCPおよびPCR-CFLP法を取り入れることにより、迅速かつ大量に遺伝子試料の多型点突然変異の解析を行った(星)。また、生殖生理現象を解明する目的でY染色体上の無精子症関連遺伝子DAZ(deleted in azoospermia)および常染色体3p25に我々が同定したDAZLA(DAZ like autosome)遺伝子についても解析を行った。その結果、DAZLA遺伝子が未分化生殖腺細胞の分化に関連していることを初めて明らかにし、公表した。(Mol. Hum. Reprod., 1999)(星、藤本)。またBCC(basel cell carcinoma)において性染色体異数性が高頻度に認められることを明らかにし、それに着目して細胞分子遺伝子解析を行った。その結果、性染色体の異数性、とくにX染色体の不活性化に関連したX monosomyが遺伝子変異を誘発することが示唆された(Int. J. Oncol., 2000)(星、藤本)。 以上の結果、性分化・生殖機能異常症例の臨床像と遺伝子解析結果に詳細な解析を加え、従来不明で終わることの多い性分化異常症患者の遺伝子診断及び家系解析によりヒトの「性の決定・分化機構」は、SRYの組織限定発現部位・時期に依存すること、性分化異常の発症の原因がY染色体以外(とくにX染色体)にも存在し、組織限定モザイシスム、キメリズムが密接に関与することを明らかにした(星、藤本)。
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