研究概要 |
原始卵胞の凍結保存法の確立ならびに凍結融解後の原始卵胞をアルギンビーズにてマイクロカプセル化した後、同種間または異種間動物の腹腔内移植による成熟卵の獲得、これらの方法で得られた成熟卵の受精能・胚発育能ならびに胎仔産生能に関し検討するとともに、原始卵胞の発育評価法として GDF-9 mRNAの発現の検討から原始卵胞の発育機構の一端を解明することを目的として基礎的研究を行った。 その結果、propandiol,sucroseを耐凍剤とした、5 step dilution 緩徐プログラムで,原始卵胞の凍結保存に成功した。さらに、活性酸素の消去酵素である、SOD(5-50unit)および一酸化窒素(NO)の消去剤であるHb(1 μg)の添加が凍結融解後の生存率の向上に寄与することを明らかにした。また、塩化アルギンビーズを用いたマイクロカプセルによる原始卵胞のマウス腹腔内移植により、その後の卵胞発育が観察されたが、卵胞腔形成まで発育した卵胞は得られなかった。一方、ラット腹腔内への異種間移植実験では、大部分が移植後1週間以内に変成し、生存が確認された卵胞は10%以下であり、卵胞の成長も確認できなかった。また、原始卵胞の長期の体外培養に成功し、FSHが卵胞発育に促進作用を有すること、一方、EGFによる卵胞発育促進作用は認めない結果をえた。さらに、原始卵胞卵、1次卵胞卵および2次卵胞卵のすべてにGDF-9 mRNAの発現を確認した。この結果は、原始卵胞の凍結保存が高率に可能であることを示すものであるが、マイクロカプセルによる卵胞発育に関しては、マイクロカプセルの素材、至適卵胞発育刺激法などさらなる研究の必要性を示唆するものである。また、原始卵胞の体外培養における成長因子の役割、GDF-9と卵発育の相互作用に関しても今後の基礎的検討が必要であると考えられる。
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