研究概要 |
【目的】妊娠中毒症症例の重症度(軽症・重症),分類別(高血圧の有無など),耐糖能異常症例の胎盤ならびに子宮内胎児発育遅延症例での超低比重リポ蛋白(very low density.lipoprotein:VLDL)受容体mRNAおよび低比重リポ蛋白(low density lipoprotein:LDL)受容体mRNAの発現を詳細に検討し,病態との関連を明らかにする.妊娠週数,疾患でその発現に変動を示す胎盤のVLDL受容体の体系的研究は希であり,周産期領域での中性脂肪などの脂質代謝の新しい側面が開けることになる. 【方法】ヒト胎盤のVLDLレセプター(R)mRNAおよびLDL-R mRNAの発現の定量化を行い検討した. 【結果】ヒト胎盤で,VLDL-R mRNA(3.6kbおよび5.8kbの2本のバンド)およびLDL-R mRNA(5.1kbのバンド)の発現を認めた.VLDL-R mRNA/G3PDH mRNA値は,正常妊娠例と比較して妊娠糖尿病,妊娠中毒症症例では高値を示した.LDL-R mRNA/G3PDH mRNA値は,正常妊娠例と比較して妊娠糖尿病,妊娠中毒症症例では低値を示した. これらの結果より,VLDL-RおよびLDL-Rの発現が,妊娠中の脂質代謝と密接に関連し,妊娠中毒症ならびに妊娠糖尿病の病態に関与する可能性が示唆された.また,胎盤においてTGはエネルギー源として,コレステロールはステロイドホルモン産生源として利用され,これらの変化は,合目的な変化として捉えていく必要がある.現在対症療法が中心のこれらの症例に対し,脂質代謝改善薬の利用などにより,積極的な対応が可能になり得る.
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