研究概要 |
平成12年においては,妊娠中毒症同様,妊娠維持免疫反応の異常が原因として重要と考えられている習慣流産に対し,特にその治療法の免疫学的作用機序に関して検討した。まず、ナチュラルキラー受容体の発現をRT-PCR-SSCP法にて検討したところ、習慣流産に対する免疫療法の前後で患者リンパ球のナチュラルキラー受容体レパートリーは、治療後妊娠の転帰に関わらず変化していないことがわかった。すなわち、夫リンパ球を用いた免疫療法の臨床的治療効果は、患者リンパ球のナチュラルキラー受容体のレパートリー変化によらない機序で発揮されていることがわかった。また、習慣流産に対し、経験的に有効とされている漢方薬の作用機序を,HLA-G発現細胞に対するリンパ球のサイトカイン分泌の点から検討した。その結果、習慣流産、中でも自己免疫異常による習慣流産に対して古くから用いられ、経験的に有効とされてきた柴苓湯と当帰芍薬散がともにTh1/Th2サイトカインバランスをTh1優位に移動させることを見出した。自己免疫異常による習慣流産患者においてはTh1/Th2サイトカインバランスが過度にTh2に移動していることが知られており、これらの漢方薬はこのサイトカインバランスを正常化させることにより、流産を防止していることがわかった。妊娠中毒症の中には、抗リン脂質抗体症候群のような自己免疫異常と関連したものが多く含まれており、こうした漢方薬が妊娠中毒症の予防にも有効であると期待できることがわかった。
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