卵胞発育と各種性分化関連物質との関係を検討するため、体外受精胚移植プログラムにより約30人より200検体におよぶ卵胞液と顆粒膜を採取。これとは別に正常月経周期における卵胞液も10検体程度採取した。卵胞液中の各種ホルモン(エストラジオール、プロゲステロン、テストステロン、hCG)を測定した。採取された顆粒膜よりRNAを抽出。RT-PCRによりSF-1の発現を確認し、また、DAX-1の発現についても確認した。 これと平行して卵胞発育に関連の深い、他の因子と性分化関連物質の関連を検討するため、Hepatocyte growth factor(HGF)とangiogeninに注目し、卵巣における存在と調節機構につき検討した。検体はIVF-ET施行症例よりインフォームドコンセントのもと採卵時に採取された卵胞液と顆粒膜細胞をもちいた。卵胞液中HGF濃度は、血液中の濃度に比べ約90倍の高値を示した。また、卵胞液中のプロゲステロン濃度、hCG濃度とは有意な正の相関を示したが、エストラジオール、テストステロンの濃度とは相関がなかった。ただし、ウエスタンブロットの解析では卵胞液中HGFは活性型となる前の一本鎖の状態で存在しており、多段階での活性調節が推測された。Angiogeninも血液中に比べ卵胞液で高濃度に存在していた。卵胞液中のangiogenin濃度はプロゲステロン濃度と正の相関を示したが、エストラジオール、テストステロン濃度とは相関がなかった。顆粒膜培養系においては、hCGならびにdbcAMP投与によりangiogenin分泌はコントロールに比べ約3倍となった。さらに、低酸素条件下においては約5.5倍の分泌を示し、顆粒膜細胞中のmRNA量は12.5倍となっていた。以上より、卵胞発育、黄体形成においては、卵胞に特異的な低酸素状態やhCG刺激などが各種血管新生因子の発現調節を行うことにより協調的な血管新生を制御していることが示唆された。
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