研究概要 |
妊娠中毒症は、重症型では母児双方に重大な結果を招く危険性があるが、その原因についてはいまだ不明である,従来より遺伝的素因がその発症と関連することが指摘されていたが、最近では免疫異常特に自己免疫反応がその発症と密接な関連性を有することが指摘されている。一方、一般にこのような遺伝学的免疫学的背景を有する多くの疾患がHLA抗原系との関連性を持つことが指摘され、それら疾患の原因究明に役立っている。このような観点から、今回の研究では、重症型の妊娠中毒症々例に関し、HLA抗原系との関連性を明らかにすることを目的とし,特にHLAクラスII抗原(HLA-DR,-DQ,-DP抗原)をDNAタイピング法により判定し,関連性を検討した。DNAタイピングは以下の方法で行った。末梢血リンパ球からDNAを抽出し、PCB(Po1ymerase chain reaction)法によりDR,DQ,DPそれぞれのアロ多型性を有する遺伝子領域を増幅,増幅されたDNAを各抗原型に特異的な制限酵素で切断し、電気泳動を施行、その泳動パターンにより抗原型を判定した。この解析を重症妊娠中毒症症例55例について行ったが,この際,妊娠中毒症発症要因として重要な抗リン脂質抗体が陽性である症例(13例)陰性である症例(41例)に分け検討した。また,正常対照として,妊娠中毒症歴のない経産婦81例についてもHLA抗原の型を判定した。いずれの解析もインフォームドコンセントを得て行った。結果として,抗リン脂質抗体陰性重症妊娠中毒症症例と正常対照との間には有意の差は観察されなかった。しかし,抗リン脂質抗体陽性重症妊娠中毒症症例では,HLA-DRB1^★04の頻度が,正常対照に比較し有意に高率であった。このことから抗リン脂質抗体陽性重症妊娠中毒症症例ではHLA-DRB1^★04について疾患感受性を有することが推察された。
|