研究概要 |
我々は癌治療の標的分子としてテロメラーゼに注目し、ハンマーヘッド型リボザイムを用いた遺伝子治療の可能性について検討した。1)約450塩基長のヒトテロメラーゼRNA成分(450base長)の14箇所のGUC配列のうち、任意にの3カ所(5′端より36,170,313塩基端を切断するようなリボザイムでそれぞれ36-170-313リボザイムと命名)を選択し、まずin vitroでの切断活性を検討した。660塩基長のヒトテロメラーゼRNA成分すなわち、リボザイムの反応基質を作製し、これらのリボザイムとモル比5:1で反応させこれらの切断効率を検討したところ、試験管内ではこれらは同程度の切断活性を示した。2)次に、リボザイムそのものをリボソームに封入して、子宮内膜癌培養細胞に導入したところ、36リボザイムだけがテロメラーゼ活性を抑制した。3)このリボザイム配列を発現ベクターにサブクローニングして再び子宮内膜癌細胞に遺伝子導入したところ、テロメラーゼ活性の滅弱がみられ、36リボザイムの癌治療への応用の可能性が示唆された。4)次に、36リボザイムの切断活性を高めるために、36GUC配列の15塩基下流にあるGUA配列をも同時に切断できるような2価のリボザイムを考案し、その有用性を検討した。試験管内でこの切断活性を36リボザイムと比較検討したところ、51GUAに対してより強い切断選択性を有し、しかも切断活性はこの2価リボザイムはより強力であった。5)しかしながらこれを子宮内膜癌細胞に導入したところ、テロメラーゼ活性の滅弱作用は弱かった。これらの一連の実験で、ヒトテロメラーゼRNA成分に対するハンマーヘッド型リボザイムでは36リボザイムが最も効果が期待でき、これはこの標的部位がテロメラーゼ分子の表面に露出しているからであり、一方51GUA部位はすでに蛋白質複合体内に入り込んでおり、もはや標的部位とはならないことが判明した。
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