研究概要 |
我々は癌治療の標的分子としてテロメラーゼに注目し、ハンマーヘッド型リボザイムを用いた癌治療の可能性について検討してきた。hTR,hTERTに対して様々なリボザイムおよびアンチセンスRNAを作成し、その酵素活性抑制効果について比較検討した。作成したリボザイム、アンチセンスRNAは1)hTRに対してtemplate領域上下流のGUC,GUAを標的にした一価、二価のリボザイム、その切断活性除去型、このリボザイムに相当するアンチセンスRNA,2)逆転写酵素成分であるhTERTのmRNAに対してはORF内外に7カ所のGUCに対するリボザイムおよびその切断活性除去型を作成しその切断活性、酵素活性抑制効果について検討した。hTRに対するリボザイムでは投与後12時間後から酵素活性抑制がみられ、24時間後にはほぼテロメラーゼ活性は消失し、その抑制効果は48時間以上持続した。投与量として5×105細胞あたり0.1mgで36リボザイムでは酵素活性抑制が見られた。2価のリボザイムはin vitroでは36リボザイムより強い切断活性を示したが、細胞導入するとテロメラーゼ活性抑制効果は36リボザイムよりは弱かった。一方hTERTに対するリボザイムでは、OFR内に標的部位を設定したものには酵素活性抑制効果は観察されなかった。mRNAのキャップサイトから20塩基下流のGUC配列を標的にした14リボザイムが遺伝子導入実験で最も強い酵素活性抑制効果が観察された。またhTERTpolyAtail直上を狙ったリボザイムでも酵素活性の抑制が観察された。このリボザイムを発現ベクターpHβAPr-1-neoにサシクローニングして細胞導入したところ、同様に強い酵素活性抑制が観察された。この遺伝子導入細胞は継代とともに細胞増殖が低下しそののち死滅した。以上より、これまで検討してきたテロメラーゼに対するリボザイムではhTRのtemplateregiに対するものと、hTERTのキャップサイト20塩基下流に対する14リボザイムが細胞内での酵素活性抑制効果が高く、臨床応用として有望であると考えられた。
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