研究概要 |
テロメラーゼを標的としたハンマーヘッド型リボザイムを用いた癌治療の可能性について検討した。ヒトテロメラーゼの構成成分のうちRNA成分(hTR),蛋白質成分として触媒成分hTERTのmRNAに対して様々なリボザイムおよびを作成し、その基質切断活性ならびに酵素活性抑制効果について比較検討した。作成したリボザイムとして1)hTRに対して36-59二価リボザイムを含めた4種、hTERTのmRNAに対してはORF内外に7種のリボザイムを作成した。HTRに対する36-59二価リボザイム以外はすべて一価リボザイムであった。1)hTRに対するリボザイムはすべてcell-free条件下では基質をよく切断し、切断活性に差は見られなかった。しかし細胞導入実験では、RNA鋳型領域近傍に標的部位がある36リボザイム、36-59二価リボザイムだけがテロメラーゼ酵素活性抑制が観察された。両者の抑制活性を比較したところ、36リボザイムが有意に強かった。したがってこのリボザイムが最も有用と考え、発現ベクターならびにレトロウイルスベクターを用いて36リボザイムの細胞導入実験を行った。発現ベクターによる導入実験では、導入したイシカワ株はすべて死滅した。AN3CA細胞では遺伝子導入後、発現クローンが得られ、これらは明らかなテロメラーゼ活性の減弱と細胞増殖能の低下が観察された。一方36-リボザイムをレトロウイルスベクターを用いてイシカワ細胞に感染させたが、リボザイム発現株は得られたがテロメラーゼ活性の減弱株は得られなかった。hTERTに対するリボザイムでは、OFR内に標的部位を設定したものには酵素活性抑制効果は観察されなかった。mRNAのキャップサイト直下を標的にした14リボザイムとhTERTpolyAtail直上を狙った3951リボザイムが遺伝子導入実験で酵素活性抑制効果が観察された。このリボザイムを発現ベクターを用いて細胞導入したところ、強い酵素活性抑制が観察された。特に14リボザイム遺伝子導入細胞は継代とともに細胞増殖が低下しそののち死滅した。以上より、これまで検討してきたテロメラーゼに対するリボザイムではhTRのRNA鋳型領域に対する36リボザイムと、hTERTmRNAのキャップサイト20塩基下流に対する14リボザイムが臨床応用として有望であると考えられた。
|