ラット妊娠中に血清レプチン値は増加しなかった。妊娠・産褥期の血清レプチン値には、脂肪細胞からのleptin mRNA発現量と、さらに産褥期には腹腔内脂肪量の変化が共に影響を及ぼすと考えられた。妊娠末期と産褥授乳群の血清レプチン値は、非妊娠群や非授乳群と比べて明らかに低下し、摂食量の変化はレプチン値の変化に合っていた。これらの変化は、妊娠末期の急速な胎児の発育と産褥の授乳のためのエネルギー獲得にとって有利に働くと考えられた。また、妊娠15日目の胎盤では、leptin mRNAの発現を認めたが、その量は少なく、ヒトとラットとの間の相違は、胎盤のleptin mRNA発現量の違いによると考えられた。 血清TNF-α値および各部位における脂肪組織でのTNF-αmRNA発現は、妊娠・産褥期を通して有意な変化は認められなかった。さらに、各部位における脂肪組織でのPPAR-γmRNA発現量も、妊娠・産褥期を通して有意な変化は認められなかった。現在、分娩前後における脂肪組織量の急激な減少の機序を検索する目的で、脂肪組織におけるapoptosisを検討しているところである。 また、ストレプトゾトシン投与により中等度の糖尿病ラットを作成して妊娠させ、非妊娠正常ラットを対照群として、妊娠正常ラット、非妊娠糖尿病ラットおよび糖尿病合併妊娠ラットを比較検討した。傍子宮脂肪組織におけるglucose transporter4(GLUT4)蛋白量は、妊娠正常ラットと非妊娠糖尿病ラットは共に低下するが、糖尿病合併妊娠ラットでは、additiveにさらに発現が低下することが示された。現在、adipocytokineの発現変化を検討している。また、妊娠時の脂肪組織におけるこのGLUT4の発現低下には、性ステロイドホルモンが関与していることが示唆された。
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